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「いてて・・・大丈夫か?」
予想していた衝撃はなく、代わりに頭上から低い声が聞こえた。
地に叩きつけられる前に誰かが少女を受け止め、そのまま一緒に倒れ込んだようだ。
固く閉じた瞳をそっと開け顔を上げると、見知らぬ青年の顔がある。
後ろに顔を向けると、あのワーウルフは喉にナイフが突き刺さり絶命していた。
もう1匹いたはずと、辺りを見回す。
「もう1匹なら、とっくに始末したわ」
少女の思考をさえぎるように声が聞こえ、暗闇から女性が姿を現した。
その言葉に安堵を覚えたのか、少女はそのまま意識を手放した。
「お、おいっ」
慌てた青年が少女の身体を揺するが、聞こえてきたのは静かな寝息だけ……
「散々走り回ったんだろうから、疲れたんでしょ? 寝かせてあげなさいよ」
くすくす笑いながら、女性が言う。
少女を抱えたまま、青年はただ困惑の表情を浮かべるしかなかった。
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