第1章 始まりの日

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ちらりと少女に視線を向けると、一つ息をつき、言葉を紡ぐ。 『家を出たら、まっすぐ森を抜けなさい』 思わぬ言葉に少女は動揺を覚えた。 だが、この暗い森の中をやみくもに走り回るより、人里を目指した方がいいというのは、至極当然のことだろう。 少女も頷き、いつもお守りとして身につけているペンタンドを握りしめる。 『どうしたらいいか分からなくなったら、"月の涙"を探しなさい。』 少女は知らない名称を耳にし、口を開こうとするが、言葉を紡ぎだすことはなかった。 自分を守る女性の後ろ姿が、早く行けと促しているのを感じたのだ。 少女は息を一つ吐き出し、表情を引き締めた。 『分かった・・・・・・必ず後で』 そう言い残し、少女は家を飛び出した――
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