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「…………飛鳥」
優しい声。
優しい笑顔。
大きな手に頭を撫でてもらうのが大好きだった。
「ほら、さっさと行くぞ」
「……側を離れるな」
「奴だけは見本にするな、ロクな人間になれんぞ」
何時も前を進んでいた。
近くて遠い存在。
必死になって走って追い掛けていた。
追い掛けると必ず先にいるのだけれど待ってくれた。
「わしゃあ飛鳥がその笑顔で笑ってくれてるだけで幸せじゃき」
辛い時代なのに何時も明るく笑顔をくれた。
乱暴に撫でてくる手は気持ちよかった。
けれど…………。
「飛鳥…………子は何時か必ず親元を離れる」
重く、理解したくない。
「………………生きてくれ…………私のいとおしい娘……」
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