運命の時計

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運命の時計

目覚まし時計は午前6時半にセットしたはずだが、何を勘違いしたのか5時52分に鳴り響く。 「ジリリリリリー!」 凄まじい爆音ぶりだ。 布団の中から右手で目覚ましのボタンを押そうとするが、手の甲で弾き飛ばしてしまう。 ガタンガタンガチャン! 何か固いモノに激突したようだ。 その衝撃からか、ボタンを押していないのに鳴り止む。 としや「また川渡さんの所で修理しなくちゃ…かな?」 モノトーンの丸い目覚ましは、大きなベルが2つ乗っかったレトロなデザイン。 文字盤には12色の数字。 透明な3つの針は、LEDによってブルーに光るギミックが施されており、なんともオシャレ。 上京する際に親友がくれた大切な目覚まし時計だが、枕元で初仕事を終えてから1年と半年。 電池交換よりも修理回数の方が多い… 布団から顔を出し、大きく背伸びをすれば、雀の鳴き声が聞こえる。 カーテンの隙間からは朝日が差し込み、大事な目覚ましが光る。 布団を剥いで、横になったまま大きくあくびをする彼の名は… "佐々木 俊弥" 都内の大学に通う工学部二年生で、電気や電子機械が大好きな19才だ。 今までに、DVDデッキ、ゲーム機、エアコンなど数々の電気製品を修理してきた。 そんな彼にとって、目覚まし時計の修理は朝飯前。 2時間もあれば、元気な目覚まし時計に元通りだ。 しかし、都内に借りた1Kの部屋では、修理設備の構築にも限界があり、高価な道具を買う余裕もない。 そこで、秋葉原に店を構える川渡電子の出番だ。 川渡電子では最先端の道具を使うことができ、大学では教えてくれない事だって教えてもらえる。 また、様々な裏情報が手に入るのも魅力的だ。 大学の太木教授に教えてもらってからは、頻繁に顔を出すようになり、川渡電子の店長"川渡 康雄"とも顔なじみとなった。 としや「今日の授業は昼までだから"あのコ"のお店でクレープを買って、川渡さんの所だな。バイト代も入るし、パソコンのパーツでも物色しようかな。」 布団から飛び出した俊弥は、やる気に満ち溢れている。 そのパワーは、気になる"あのコ"によるものだろうか…
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