-序章-

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~†~ 自分は何をしているの? 頭に思い浮かんだのは、それだけだった。 その子供の周りは、黒衣を纏った者達が取り囲んでいた。 子供を睨む様に見つめる、黒衣の大人達。 そんな中で、子供は確かに、子供の意志で立っていた。 子供の立っている場所は、真っ赤な血の海。 周囲に転がるのは、その血の海の元であろう、人体の破片が散らばっていた。 小さな子供が、組み立てたパズルを一気に崩したかの様に、人間の一部が、そこかしこに、ばら撒かれていた。 その人間の一部には、黒衣の一部が見え、唯一それだけが、黒衣の者達の仲間であった事を伺わせていた。 「うぁあぁああッ!!!!!!」 不意に、その子供が発狂したかの如く叫んだ。 その手には、先程からずっとキツく握られていた、子供自身の背丈程はある鋏。 此処に散らばった人体の破片は、全て子供が作った物だったのだ。 自身の背丈程の鋏を、子供は両手で振り回し、此処までの惨劇を引き起こしたのだ。 再び、子供が鋏を両手に握った時、黒衣の者達が一斉に引く中で、一人の黒衣が、素早く前へと出た。 子供の振り回そうとした鋏を、容易く真ん中からへし折り、その黒衣は、あっさりとその場に終止符を打った。 「ひッ―――」 引き攣った悲鳴を小さく喉奥に飲み込んで、子供は尻餅をついて、後ずさる。 そんな子供の態度に構う事なく、黒衣は、静かに子供に歩み寄った。 「ぅぐっ!!!!」 再び、素早く黒衣が動いたかと思うと、次の瞬間には、子供は腹を殴られ気絶していた。 その黒衣は、気絶した子供を脇に抱えると、周囲に居た黒衣達に何か指示をすると、深く被ったフードを脱いだ。 妙に青い月明かりが、その黒衣の白銀色の髪を、静かに輝かせ、ニヤリと笑った。 .
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