4人が本棚に入れています
本棚に追加
~†~
自分は何をしているの?
頭に思い浮かんだのは、それだけだった。
その子供の周りは、黒衣を纏った者達が取り囲んでいた。
子供を睨む様に見つめる、黒衣の大人達。
そんな中で、子供は確かに、子供の意志で立っていた。
子供の立っている場所は、真っ赤な血の海。
周囲に転がるのは、その血の海の元であろう、人体の破片が散らばっていた。
小さな子供が、組み立てたパズルを一気に崩したかの様に、人間の一部が、そこかしこに、ばら撒かれていた。
その人間の一部には、黒衣の一部が見え、唯一それだけが、黒衣の者達の仲間であった事を伺わせていた。
「うぁあぁああッ!!!!!!」
不意に、その子供が発狂したかの如く叫んだ。
その手には、先程からずっとキツく握られていた、子供自身の背丈程はある鋏。
此処に散らばった人体の破片は、全て子供が作った物だったのだ。
自身の背丈程の鋏を、子供は両手で振り回し、此処までの惨劇を引き起こしたのだ。
再び、子供が鋏を両手に握った時、黒衣の者達が一斉に引く中で、一人の黒衣が、素早く前へと出た。
子供の振り回そうとした鋏を、容易く真ん中からへし折り、その黒衣は、あっさりとその場に終止符を打った。
「ひッ―――」
引き攣った悲鳴を小さく喉奥に飲み込んで、子供は尻餅をついて、後ずさる。
そんな子供の態度に構う事なく、黒衣は、静かに子供に歩み寄った。
「ぅぐっ!!!!」
再び、素早く黒衣が動いたかと思うと、次の瞬間には、子供は腹を殴られ気絶していた。
その黒衣は、気絶した子供を脇に抱えると、周囲に居た黒衣達に何か指示をすると、深く被ったフードを脱いだ。
妙に青い月明かりが、その黒衣の白銀色の髪を、静かに輝かせ、ニヤリと笑った。
.
最初のコメントを投稿しよう!