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透き通った緑色の様な液体に満たされた、沢山ある中の一つの筒状の水槽の様なポットの中にそれはあった。
それは小さな少年だった。
肌は、雪の様に白く、その白い綺麗な肌に合わない襤褸布の様な服。
口には、酸素マスクの様な物がつけられ、身体全体には紐の様なケーブルが、無数につけられていた。
その異様な光景を前にしても、櫁瑠と研究員は、それがさも当たり前の様に対話していた。
「もうすぐ??」
「えぇ。
後は、身体に成長促進剤を入れれば完璧ですね」
「そっかぁ、楽しみ♪」
研究員の言葉に、櫁瑠は、にぃっと笑った。
それは、何か欲しい物を与えられた子供の様な笑みで、それと同時に狂気的でもあった。
研究員の手によって、ポットに成長促進剤が入れられる。
その様を、櫁瑠は、じっと見つめていた。
その表情は笑みを浮かべたままだった。
「これで完了です」
研究員が、ポットから離れてそう言った時だった。
「そう、ご苦労様‥‥‥」
ヒュンッ――、
櫁瑠の凛と澄んだ声が響き、一陣の風が凪いだ。
バシャッ―――、
次の瞬間、研究員の身体が傾ぎ、まるで水溜まりに伏したかの様な音を立てて、無造作に転がった。
櫁瑠の手には、いつの間にか、銀色の装飾を施された鎌が、しっかりと握られていた。
振り切られた鎌の刃には、赤い模様が、はっきりと、存在感を示していた。
「君は作業が早くて好きだったんだけど‥‥、
この子の制作が済んだなら用済み何だよ」
もう動かなくなった屍に、櫁瑠は笑顔で語りかけた。
無論、返事は無いのだが、それでも櫁瑠は笑顔だった。
そして、まるで屍と話しているかの様に、会話を続けた。
「こんなの酷いって??
ふふっ、お褒めの言葉ありがとう‥‥」
白い衣装に、大量の朱を咲かせて、屍の周りを彩る朱い池で、櫁瑠は嗤った。
その様は、誰が何処から見ようとも、異質であり異常であり狂喜的であった。
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