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と、そんな敵を無視したお遊びをしていると。
「……るな」
泥で固めれ、身動き一つすらとれない魔術師の男が。
「ふざけるなァァァァ!!」
吠えた。
咆哮した。
全身にこびりついた、一般的なモノとは一線を画す固さ・重さ・粘度を持つ特殊な泥を、鈍重な枷を吹き飛ばし、さらに俺に吠える。
「知っているぞ!貴様の出生の秘密……。そして貴様の姉の所在もなァ!!貴様を殺したあと、すぐにでも」
「黙れ」
俺が発した言葉はそのまま重圧になり、魔術師は言葉を喋るのをやめた。いや、喋れなかったというべきか。
手加減して情報を搾り取った結果がコレならもういいかな。
こいつを駒として動かしてるボス的な奴もいるっつーコトが分かったし。
てか、俺って手加減すんのが癖になってんなww
悪い癖だ。治さねば。
つっても以前のアルギュロスん時も王様ん時もなんだかんだ言って、散々手加減しまくってたんだけどなwwww
けど……わかったわかった分かりましたよ。
お前がそう言うなら手加減はもうせんよ。
一度だけ、お前に本気を見せてやる。
「『私の両腕に抱くは愛しい人』」
それはまさにオペラでも歌うように、両目を瞑り美しく凛とした声で紡ぐ。
こいつはたった今、俺の最大の地雷を、クレイモアを踏んだ。
それを理解したのか、白桜は「やれやれ…」と、諦めた顔をし、黒鉄は魔術師を哀れんでいるのか胸の前で十字を切っている。
紅花は知らん。
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