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「俺って、優しい?」
しばしの沈黙の後、渡辺翔太はそんな質問を口にした。
「うん、そう思うけど……」
「よかった」
そう言って渡辺翔太は力なく笑う。
「渡辺君?」
「俺さ、どうしても、損得勘定とか考えちゃうんだよね」
何だ。
話の流れが見えない。
「それって、普通のことじゃない?」
「うん、俺にとっては普通なんだけど、でも、たまに、それが堪らなく嫌になる時がある」
「どういうこと?」
渡辺翔太の言っていることの意味がわからない。
「うーん、優しい愚か者に憧れてる、って言ってわかる?」
「わからない。愚か者になりたいの?」
「うん。無条件に、親切な人間になりたくなる時があるんだ」
「無条件?それってただのバカじゃない。だから、愚か者?」
渡辺翔太は「はは、ただのバカか。確かにね」と言って、また笑ったが、私にはどうして彼が笑っているのかも理解できなかった。
「久保さんは、夏目のことどう思う?」
また、質問。
私の最初の質問に対する答えはどこへ行ってしまったのだろうか。
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