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「いただきます」
渡辺翔太たちは本当にここへやってくるのかとか、私たちがそれを謀っていたことがバレやしないかとか、様々な考えが頭の中を駆け巡っていて、正直カレーの味なんて全くわからなかった。
正面に座る千佳へと目をやる。
表面上はあまり変化がないが、今のところ、おそらくだがスキーを楽しんでくれていると思う。
よかった。
単純にそう思ったのは、あるいは自分への免罪符のつもりだったのかもしれない。
千佳はあまり嘘の得意な子ではない、と私は思っている。
基本的に優しい人間なのだ。
私とは違う。
自分のテリトリーの外の人間に対してはある種の厳しさのようなものも発揮するが、テリトリーの中の人間にはとても優しいし、愛情深い。
だから、私は千佳と夏目宗佑を会わせることさえできれば、答えはわかると思っていた。
もっと言えば、千佳があからさまな反応を見せると思っていたのだ。
根拠のない確信のようなものを抱いていると言っても良かった。
露骨に気を張っていたせいか、私は渡辺翔太が食堂に入ってきたことに即座に気が付いた。
と同時に、向こうもこちらの存在を認めたのがわかった。
「あれ、久保さんっ!?」
作り物の驚きを見せてはじめに声を発したのは、渡辺翔太だった。
渡辺翔太の隣に夏目宗佑、さらにその後ろには柳瀬拓実がいた。
夏目宗佑はわずかに目を見開いて見せたが、過剰と言える程のものではない。
食堂へと入ってきた彼ら三人は、渡辺翔太の先導によって、私たちのテーブルのすぐそばまで来た。
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