第四章

26/38

75人が本棚に入れています
本棚に追加
/507ページ
「やっぱ夏目は夏目だね」 夏目宗佑のこうした部分には既に慣れているのであろう、渡辺翔太はなんでもないようにそう言って笑った。 「渡辺君は?臨床?」 私たちの中では最も臨床向きと思われた渡辺翔太だが、「俺?俺は研究」とさらりと答える。 「そうなんだ」 「うん、俺ノーベル賞狙ってっから」 随分簡単に言ってのけるものだなと思ったが、それを語るに恥ずかしくないほどの力量の持ち主であることは知っていた。 「大きくでたね」 夏目宗佑は笑ったが、それは決して渡辺翔太をバカにしてのものではなかった。 「ご馳走様です」 早々に食事を終えた柳瀬拓実が食器を置いて手を合わせた。 私たちの方が先に食べ始めていたのに、随分と早い。 彼には、なんとなくゆっくりものを食べるイメージがあったためか、少し意外に感じた。 その後、千佳に夏目宗佑にと食事を終え、お開きの雰囲気が漂ってきたところで、「この後さ、一緒に滑らない?」と言ったのは当然渡辺翔太だ。 「おい、翔太」 夏目宗佑が咎めるように渡辺翔太の腕を掴んだが、渡辺翔太が何やら耳打ちしたことで夏目宗佑の制止が止まった。 柳瀬拓実は我関せずと言ったように、無表情を貫いている。
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加