第四章

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「ね?ダメ?」 「私はいいけど……」と言いながら千佳の様子を伺う。 「別に、いいよ」 千佳が短くそう答えたことで私は胸を撫で下ろした。 「よっしゃ。じゃあ、行こっ」 渡辺翔太が明るくそう言って立ち上がったことで、食堂での時間が終了した。 スキー板を取って準備を始めたところで、柳瀬拓実が一人スノーボードを手にしていることに気付いた。 「柳瀬君、スノーボードなの?」 「うん」 彼らしい短い返事だ。 「スキーもやったことないらしいのに、何故かボードチャレンジしてんだよ、こいつ。朝からコケまくり」 横から渡辺翔太が情報を補足する。 「結構上達したし」 拗ねたようにそういう柳瀬拓実に対し、夏目宗佑が「そうだよな。上達スピード早くて驚いたよ」と言いながらニコリと笑った。 「へえ」と私が呟いた時には、すでにリフトに向けて柳瀬拓実が滑り出していた。 本当にどこまでもマイペースな人だ。 柳瀬拓実の背中を見ながらそんなことを考えていると、渡辺翔太が「そうだ」と何かを思いついたように言葉を発した。 「高橋さん、夏目にスキー教わったら?」 渡辺翔太は突然そんなことを言い出した。
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