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「夏目君?いい人だなとは思うけど」
「惚れた?」
「え?」
何を言ってるの?
「カッコイイでしょ、夏目?」
「まあ確かに整った顔立ちだなとは思うけど……、でもあそこまで聖人君主だと、一緒にいて息が詰まりそう」
確かに格好がいいとは思うが、おそらく好きになることはないだろう。
私にとって夏目宗佑は異次元の存在と言ってもよかった。
「んー、そうかな。でも、もうちょっと夏目のこと知ったら、多分、好きになるよ」
先ほど面と向かって私のことを狙っているなんて言った渡辺翔太は当然のようにそんなことを言う。
夏目宗佑よりもよっぽど理解できない存在かもしれない。
「何?夏目君のこと好きなの?」
冗談のつもりだったのに、渡辺翔太は「そうかもね」と嘘とも本当ともつかないような言葉を返してくるので、反応に困る。
「変態?」
「なんで。友達好きじゃいけない?」
「いけなくないけど、ちょっと気持ち悪い」
「はは、もっともだ」
ダメだ。
わからない。
彼は何を言っている?
「よくわからないけど、でも、渡辺君はいい人だと思う」
嘘を吐いたつもりはなかったが、渡辺翔太はまた不思議な笑みを見せてリフトから降りた。
「どうも」という彼の囁きが雪景色に消える。
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