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「一緒に滑る?」
渡辺翔太の問いに対し、私は「ううん、一人で行くわ」と返してスタートを切る。
「おーけー」と聞こえたような気がしたのは、あるいは空耳だったかもしれない。
その後、私は一人で上り下りを繰り返した。
途中柳瀬拓実を見かけたが、今日はじめてスノーボードに挑戦したのだというなら、なるほどすごい上達ぶりだ。
見た目通りだなと妙に感心した。
日も落ちてきて、そろそろ千佳たちに連絡を取ろうかと思った矢先、不意に後ろから誰からにぶつかられた。
「え」
まずいと思ったときには遅かった。
バランスを崩して、コースの端を意味するロープへと突っ込む。
何とかそこで踏みとどまろうと思ったのだが、その思いも空しく、私の体はロープの外へと投げ出された。
「ん」
体が痛い。
そう思うのに、はっきりとどこが痛いのかはわからなかった。
どうしよう。
誰か、呼ばないと。
「久保さんっ」
え。
聞こえた声に反応して、何とか体を起こそうとするも、わずかに体位を変えることしかできない。
誰?
渡辺翔太?
最初に彼の名前が浮かんだのは、私の願望だったのかもしれない。
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