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「久保さんっ」
声が近づいたかと思ったら、微かに確保された視界の中に、見覚えのある青いウェアが現れた。
「久保さん、大丈夫?」
「夏目、くん?」
私はその人の名前を呼び、今度こそ体を起こした。
そこにいたのは、確かに夏目宗佑その人だった。
「大丈夫?どこか痛いところある?」
血相を変えた夏目宗佑を見ていると、不思議と冷静さが戻ってくる。
「夏目君……、なんで……?」
「何でって、久保さんが落ちるの見えたからっ」
夏目宗佑はウェアのポケットから携帯電話を出すと、素早く救助の連絡を入れた。
「すぐ、人来てくれるから」
場違いだとはわかっていながらも、私は、渡辺翔太があそこまで夏目宗佑に固執する理由が僅かにわかったような思いがした。
この人、安心する。
「久保さんっ!?」
夏目宗佑の声に心地よさを感じながら、私の意識はそこで切れた――
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