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慎重に歩きながら一階へ降りる。
まだみんな寝ているのか、人の気配はない。
少しばかり喉が渇いていた私は、キッチンに立ってホットミクルを作り出した。
途中、背後に気配を感じて振り返る。
階段から降りてきたのは、夏目宗佑だった。
「おはよう」
先に口を開いたのは夏目宗佑だ。
私は多少警戒しながら「おはよう」と言葉を返した。
「もう、歩いて大丈夫なの?」
「うん。ゆっくりなら、問題ないよ」
「そう、よかった」
夏目宗佑は柔らかに微笑んだ。
「昨日、ありがとう」
「ん?」
夏目宗佑が思い当たらないという表情をしたので、「助けてくれて」と言葉を補足する。
「ああ。別に、大したことしてないよ。久保さんが、無事でよかった」
改めて、この人は本当に聖人君主みたいな人だと思った矢先のことだった。
「ねえ」と話を切り出したのは夏目宗佑だ。
「久保さんさ、俺が高橋さんと知り合いなのをわざと隠してるんじゃないかって勘ぐってたんでしょう?」
彼は急にそんなことを口にした。
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