第五章

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「先生、ちゃんと寝てますか?」 「はは、変なこと聞くね。さっき寝てたでしょう」 そういう意味ではないとわかっているはずなのに、茶化して笑う。 もう。 「寝たの何時ですか?睡眠時間は?中川さんの処置をしたのが先生ってことは、ほとんど」 夏目先生は「大丈夫だから」と私の言葉を遮ると、「心配してくれてありがとう」と続けて笑う。 そうされると私は黙るしかないからずるい。 確かに何の異常もなさそうに見えるのが夏目先生の怖いところで、いつか突然倒れたりしないかとヒヤヒヤする。 結局それ以上は何も追及せぬまま、引き継ぎを済ませて日勤が始まる。 「救急隊からです。美浜ヶ裏バイパスでトラックと自動車の衝突事故、男性一名、意識レベル300」 「受けます」 「救急隊より連絡、先ほど――」 「受けてください」 「救急隊から――」 「受けて」 「万床だ。断れ」 「でもっ」 「うちが断ったからって死ぬ訳じゃなし、何でも安請け合いすればいいってもんじゃない。できないことをできないというのも責任だと何度言えばわかる」 「……申し訳ありません」 しばしの沈黙の後、夏目先生は素直に謝罪して、目の前の患者に意識を戻した。
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