第五章

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「よかったー」 将晴が吐き出すように声を出して突然しゃがみ込むものだから、私はびっくりしてしまった。 「将晴?」 「いや、直樹の提案だったんだけど、外したらどうしようかと思ったら今週ずっと気が気じゃなくて……」 「直くんが……」 直樹君は将晴の弟だ。 これまで何度も会ったことがあるが、将晴と違って器用で社交的な少年だ。 そして、その誠実さや優しさは将春とよく似ている。 「今日、直くんは?」 「友達んとこ」 「え」 「あ、追い出した訳じゃないよ。あいつが、自分から……」 「あ、そう。そっか」 高校生の子に気を使わせてしまって、申し訳ない。 「これ、将晴が作ったの?」 「ん?ああ」 照れたように視線を逸らす様子を、素直に可愛らしいと思った。 「将晴」 「ん?」 「ありがとう」 「バカ、そういうの反則」 しゃがんだままの将晴が腕の中に顔を埋める。 その耳が真っ赤に染まっているのが見えて、思わず笑みがこぼれた。
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