第五章

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「夏目先生、お疲れ様です」 「お疲れ様。須藤さん、もう上がり?」 「いえ、私は朝までです」 「あ、そうなんだ。ご機嫌だから、この後彼氏と会う予定でもあるのかと思った」 夏目先生が不思議そうに首を傾げる。 将晴とはあれ以来会えていないが、今回の私のご機嫌には将晴は関係ない。 「今日の当直、小泉先生じゃないですか。先生は夜勤でもないですし、もう上がりですよね」 これで機嫌が良くならないはずがない。 「そんなことでそんなにニコニコしてくれてるの?」と驚いた先生は、ニコリと笑って「ありがとう」と続けた。 「そんなことじゃないですよ!今日はいっぱい寝れますよね」 「はは、そうだね」 そう言った夏目先生の手に、コンビニ袋が下げられているのに気付く。 中身はまたおにぎりだ。 「先生、今日くらいもっとちゃんとしたもの食べてくださいよ」 コンビニのお弁当を食べながら言っても何の説得力もないが、おにぎりよりはマシだと思う。 「ん?んー、でも、まあおにぎり安いし」 「え、値段の問題なんですか!?」 こう言ってはなんだが、これだけ働いていれば、おそらく夏目先生の収入はかなり高額になっているのではないだろうか。 この人にお金を使う暇があるとも思えない。
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