第五章

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「いや、そりゃまあ時間短縮も大きいけど」 栄養補給とか、もっと言えば食は娯楽という観点があってもいいと思うのだが、この人にはそれは通じないのだろうか。 なんのために食事を摂るのかと聞いたら、生きるためという答えが返ってきそうだ。 「先生って彼女いないんですか?」 夏目先生の顔をじっと見つめていたら、以前から抱いていた疑問が思わず口をついて出た。 「いないよ。そんな暇ない」 予想通りの答えだった。 あれだけ病院に泊まっていたら誰かと会う時間なんてほとんど取れそうにない。 「もったいないですよ。先生かっこいいのに」 こういうことをすんなり言えるのは、相手が夏目先生だからだ。 「ほんと?ありがとう」 夏目先生はニコリと笑った。 これで落ちない女の人を探す方が難しい。 「好きな人は?いますよね」 断言したのは当てずっぽうだったが、こういう時の私の勘は結構当たるのだ。 「いないよ」 「いますよ」 「いないって。なんでそんなに自信満々なの?」 「絶対います。美人さんですか?」 私の質問に対し、夏目先生はきょとんとした表情を見せた後に、くすくすと笑いだした。 「え」 なんか、変なこと言ったかな私。 あ、最初の質問が容姿って、幼稚すぎたかも。
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