第五章

19/42

75人が本棚に入れています
本棚に追加
/507ページ
「でも、連絡先わからないからね」 「え?知らないんですか?」 「知らないよ。住所もメールアドレスも何にも知らない」 「え?じゃあどうやって会うんですか?」 「もう、八年近く会ってないな」 「え!?」 八年って。 「八年間、一度も会ってないんですか?」 「うん、今どうしてるのかもわからない」 「それでも、好きなんですか?」 私の質問に対し夏目先生は寂しそうに笑って「僕には、彼女しかいないから」と答えながら立ち上がる。 終わりの合図だった。 「じゃあね。夜勤頑張って」 「はい、お疲れ様です。先生!ちゃんと寝てくださいね」 「はい」 夏目先生が小さく手を振ってその場を後にする。 何その可愛らしい仕草、なんてさすがに口に出すわけにはいかない。 「よしっ」 一人で気合いを入れ直した私は、その場をあとにして仕事へと向かった。
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加