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「今日、どうしたの?」
「どうしたのって?」
「なんか、いつになく優しいから」
「俺いつもそんな冷たい?」
「そういうことじゃないよ」
そういうことではない。
将晴はいつでも優しい。
ただ、器用じゃないのだ。
俗にいうようなスマートなエスコートができるような人じゃない。
「んー、ん、この間さ、誕生日なのに放置しちゃったから、詫び」
「そんなことまだ気にしてたの?」
二週間も経っているのに。
鈍いくせに、結構細いこと気にするんだから。
「いいよ、そんなの。いろいろ準備してくれただけで、十分嬉しかった」
本音だ。
いつもの将晴からすれば誕生日を覚えてくれていただけでも感動ものである。
「ん、んー、でも、やっぱ、ごめん」
将晴はバツが悪そうに目を逸らす。
もう、そんな顔してもらっても嬉しくない。
「将晴」
「ん?」
「好きだよ」
「は」
「一生懸命仕事する将晴が好き。人に優しい将晴が好き。恥ずかしがり屋の将晴が」
「ストップ。待った。待って」
口元を手で隠して顔の紅潮を誤魔化そうとしているが、ここまで真っ赤じゃもう無駄だ。
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