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「大丈夫。ちょっと、下がってて」
将晴は少女に向かって囁いたが、男の怒りの矛先はすでに将晴に向いていた。
「てめぇっ」
男が激昂しているのがわかる。
やばい。
何か、何か、武器になるもの。
「通してください。みなさん下がって」
場を仕切るかのような声に反応して振り返ると、逃げ惑う人々の流れに逆らって制服警官二名が姿を現した。
その手に1メートルは超える随分と長い棒のようなものが握られているのが見えて、思わず駆け寄った。
「お願いします、貸してくださいっ」
「何だ君はっ」
「お願いしますっ。将晴がっ」
警察官は棒に手をかけた私を警戒しているようだったが、もう一人の警察官が肩に手をかけながら「待て、あの人は」と呟いたことで注意がそちらに逸れる。
私はその隙に棒を奪い取った。
「あっ、待て」
「将晴っ」
私はその棒を将晴に向かって放った。
地面を滑ったそれに将晴が手をかけた瞬間が、始まりの合図だった。
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