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「ヤァサァッ」
空気を切り裂くような将晴の一声と同時に、ナイフを持った男が将晴に向かって飛び込んだ。
正眼に構えた将晴は、その棒で小さな半月を描いてナイフを弾きながら男の脳天を捉えた。
「メェーン」という声がその動作に遅れて聞こえてきたように感じたのは、あるいは私の錯覚だったかもしれない。
一瞬の出来事だった。
「なっ」
私が棒を奪い取った警察官が唖然とした表情を見せる中、棒を放った将晴は流れるような動きで男の腕をねじり上げた。
「何だ、あいつ……」
もう一人の警察官が「加護将晴、全日本剣道選手権の最年少覇者だ」と答えた時には、勝負は決着していた。
「警視庁捜査一課の加護です。警杖ありがとうございます。あと、手錠貸していただけませんか。今日非番なんで、持ってなくて」
仕事モードの将晴は、普段では考えられないくらい堂々と言葉を口にする。
その凛々しい表情は、高校時代の稽古を思い起こさせた。
将晴の言葉に対し私の隣の警察官は「あっ、はいっ」と慌てた様子で対応した。
その後、さらにパトカーが到着して事件は完全に終息を迎える。
警察官の人々と将晴が会話しているのを黙って見ていたが、「署にご同行」という単語が聞こえた。
そりゃあそうだよね。
将晴の話というのは気になったが、それを聞くのはまだ今度になりそうだ。
そう思っていると、周りの警察官に何かを断って将晴がこちらにやっていた。
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