第五章

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「お疲れ様」 「お疲れ様です、夏目先生。今日日勤入ってないんですよね?当直じゃない以上に珍しくないですか?」 夜勤明け。 スタッフルームでコンビニ弁当を食べていると、またもや夏目先生と遭遇した。 先生の食生活に口を出しておきながら、どれだけコンビニ弁当を食べているんだと思われているかもしれない。 「須藤さん、僕のシフト詳しいね」 「誰でもわかりますよ。先生、いつでも入ってますもん。違法じゃないですか?」 「労働基準法?そんなの守ってたら成り立たないよ」 涼しい表情で滅茶苦茶なことを口にする。 もちろん、先生が言っていることが事実であることは私もよくわかっている。 「それにしても、先生の労働時間は異常です。先生、もっと自分のこと大切にした方がいいですよ」 以前から思っていたことを口にしたはずだったが、夏目先生はまるで意に介していないようにきょとんとした表情で首を傾げた。 「僕?僕のことはいいよ。別にいなくなって誰が困る訳じゃなし」 「困りますよ!」 信じられない発言に思わず大きな声が出た。 夏目先生がいなくなって誰も困らない? 本気で言っているのだろうか。 この人は、なんでこんな。 「なんで、先生は、そんなにご自分のことを蔑ろにするんですか……」 「なんで……か」 先生は目を伏せてゆっくりと首を傾げた。 憂いを帯びた表情に不思議な色気が漂う。
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