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私は夏目先生を連れて一般病棟へと足を踏み入れた。
救命救急センターに閉じこもっている夏目先生はおそらくほとんど来たことがないだろうが、この三月までここで働いていた私にとっては勝手知ったる場所だ。
「須藤さん、久しぶり」
受付スタッフと短い会話を交わし、お目当ての病室を教えてもらった私はその病室へ向かってエレベーターへと乗り込んだ。
「誰の病室へ向かってるの?」
「行けばわかります」
目的の階でエレベーターを降り、廊下を歩く。
まだ半年も経っていないのに、随分と久しぶりにこの廊下を通ったような心地がした。
病室の前のネームプレートでベッドの位置を確認して、病室の扉を開く。
「こんにちは彩ちゃん、須藤です」
カーテンの前で自らの名前を名乗ると、内側から「須藤さんっ」と嬉々とした声が聞こえてきた。
「入るよ」
カーテンを開ける。
ベッドの上には一人の少女が横たわっていた。
「ごめんね、急に」
「いいよそんなのっ。須藤さん久しぶりー」
少女はゆっくりと体を起こす。
相変わらず、明るい子だ。
半年前と何ら変りない姿に安堵した。
「あ、もしかして夏目先生!?」
「えっ」
彩ちゃんの高すぎるテンションに夏目先生が困惑してるのがわかり、何故だか少し笑いそうになってしまった。
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