第五章

35/42

75人が本棚に入れています
本棚に追加
/507ページ
「須藤さん」 「はい」 「ありがとう、ね」 その言葉は、先ほどのありがとうとは違って、きんとお礼の意味が込められていた。 「いえ。わかりました?夏目先生はみんなに必要とされているんですから。わかったら、ちゃんと休みもとって」 私はそこで言葉を止めた。 夏目先生が申し訳なさそうに眉を下げたからだ。 「先生?」 「ありがとうは嘘じゃないけど、でも、それはできないよ」 「何で……」 「ごめんね。せっかく僕のこと考えてくれたのに。須藤さんに感謝してるのは本当なんだ。僕、須藤さんの、そういう所にすごく救われてる」 「なんで、そんなこと言うんですか」 届いてくれないくせに、そんなことだけ言うなんて、そんなのズルい。 「須藤さんは絶対に僕にはなびかないから」 夏目先生は寂しそうに目を伏せて即答した。 「どういう意味ですか?」 「そのままの意味だよ。人はよく、僕を肯定する」 夏目先生の言っていることの意味がわからない。
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加