第五章

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「したって。あれ、兄貴めっちゃ気にしてたんだから」 「嘘!?」 「ほんと!ね、だから俺の卒業まで待てなかったんでしょ?」 まさかそんなはずはないと思って将晴の顔色を伺ったが、無言で耳を赤らめる様が直くんの言葉を肯定していた。 「え?ほんとなの?」 「うっせーな。わりぃかよ」 将晴の口が悪くなるのは、最上級の照れ隠しだ。 顔がにやけるのを止められなかった。 将晴がそんなことを思ってたなんて。 「将晴かわいー。ねえ、頭撫でていい?」 「いい訳ないだろ」 「えー、撫でてもらいなよ兄貴。俺のことは気にしなくていいからさ」 「うるさい直樹。お前らほんといい加減にしろ」 直くんがまた笑った。 直くんってほんとに将晴とは似てない。 よくしゃべるし、照れたりなんかしないし。 「てか、真奈美さん、料理の腕パワーアップしたよね?」 「ほんと?やった」 将晴に負けてはいないと思い、ちょっと手をかけた甲斐があったようだ。 「今度肉じゃが作ってよ。俺好きなんだ」 「肉じゃが?いいけど……」 私には若干ハードルが高い気もするが、レシピを見ながら作れば何とかなるだろう。
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