第五章

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「おい、うるさい直樹」 「なんで?兄貴も好きでしょ肉じゃが」 「そうなの?」 「別に嫌いじゃないけど、特に好きでもないよ」 「とか言って、結構好きなくせに。この間久々に食べたらやっぱりうまかったから、最近すげー肉じゃが食べたいんだよね」 「この間?まさか将晴が作ったの?」 「まさか。お隣さんからの差し入れ」 直くんの言葉を将晴が「おい」と言って制止する。 「お隣さん?」 「お前が誕生日のとき、隣に料理持ってったろ?それで、ここがお前の部屋だと思ってこの間肉じゃが持ってきたんだ。お返しにって」 将晴の説明を聞いて、状況を心得た。 同時に、すっかりと存在を忘れていた美人の隣人さんのことを思い出した。 「何度か来たの?」 「いや、その一回だけ。っていうか、ちゃんと説明しろよ。俺がドア開けたらすげー驚かれたんだけど」 「ごめん」 やっぱりあの時私のことをこの部屋の主だと思っていたようだ。 まあ、将晴がご近所付き合いをしているとも思えないし、それもそのはずか。 「で?美味しかった?肉じゃが?」 「うん、超美味かった」 即答する直くんに対し、将晴は「別に、普通だよ」と目を逸らしたが、どうやら私の作る料理よりはずっと美味しいようだ。 うーん、自分の料理の腕がイマイチであることはわかっているが、ちょっと悔しいな。
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