第五章

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「お隣さんって、何さん?」 「知らない。興味ない。帰るときに見ていけば」 「そう」 興味ないと言った将晴の語調の強さに何か違和感を覚えるのは、少し勘繰りすぎだろうか。 やめやめ、そんなの疑ってもバカバカしい。 食事を終えて一息つくと、壁に掛けられたアナログ時計に目をやった。 「泊まってく?」 「ううん、今日は帰るよ。明日早いし」 自分の家の方が病院に近い。 今から帰るのは少し面倒だが、明日の朝の手間を考えるとやはり帰るべきだろう。 「じゃ、駅まで送ってくよ」 「ありがとう」 荷物をまとめると将晴に続いて外へ出る。 隣の部屋が気になった私は、その表札にちらりと視線をやった。 高橋―― どこにでもあるはずの普通のそれは、何故だか私の胸をざわつかせた。 「何してんの?」 「ごめん、すぐ行く」 私は彼女の存在を意識的に外に追いやって、将晴のアパートの階段を下った――
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