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「将晴、まさはるっ」
「須藤さん、落ち着いて」
「でも、将晴がっ」
「大丈夫だからっ」
夏目先生が私の体を抱いて制止する。
そうしていてもらわないでは、おかしくなりそうだった。
なんで。
何で将晴が。
「須藤さんっ」
夏目先生が大きな声で私の名前を叫んだ。
「この救命救急センターの一員として動けないのなら、今すぐここから出て行って」
夏目先生がまっすぐに私の目を見る。
それは、当然の言葉だった。
「できます。大丈夫です」
「本当だね?」
「はい」
落ち着け、私。
冷静になれ。
何で将晴がとか、そんなのは後だ。
とにかく、今は将晴を救うことに全力を注がないと。
「救急車、もう一台来ます」
けたたましく鳴り響くサイレンの音とともに、さらにもう一台の救急車が到着する。
「須藤さん、そっちの患者さんお願いっ」
「はいっ」
私は言われるがままに、新たに到着した救急車に向かって駆け出した。
後方のドアが開き、ストレッチャーが運び出される。
「何で……」
現れたのは、いつぞや料理を差し入れた美人のお隣さんだった――
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