第六章

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「あ、羽生さん帰ってくるって聞いた?」 「え?羽生さんってあの羽生さんですか?」 羽生善人。 キャリアにして捜査員として警視庁捜査一課に在籍した異色の経歴の持ち主で、俺なんかとは比較にならないくらいの異端児だ。 直接会ったことはなかったが、噂は嫌という程耳に入っていた。 「他にどの羽生さんがいるんだよ。理事官だとさ」 「キャリアの理事官ってドラマの中だけだと思ってました」 「そりゃそうだ。一課じゃ史上初だ」 「ですよね」 理事官というのは警視庁刑事部捜査一課のNo.2で、捜査一課長の腹心として事件の指揮・監督をする者だ。 捜査二課ならまだしも、一課の理事官にキャリアが就任するなんて聞いたことがない。 通常はノンキャリのたたき上げ、ベテラン刑事が就くべき役職だ。 理由は簡単だ。 現場を知らないキャリアに務まるような役職ではないから。 何をどうしたらキャリアから一課の理事官になれるというのだろうか。 「それって、羽生さん自身が捜査一課に固執してるってことですよね?」 「他にないだろう。というか、そんな人事、本人が固執したところでまかり通ることに驚きだけどな」 その意見には俺も同意だ。 一体どんな人なのだろうか。
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