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「でも、そんなに捜査一課に拘るならなんでキャリアなんかで入ったんでしょう。普通に入った方がずっと楽だったろうに」
キャリア組で、しかも羽生さんほど優秀な人が現場に関わっていくには限界がある。
理事官もすでに現場からは離れてしまっているように思うが、これからさらに出世の階段を上っていくことを考えれば、これが最後の機会だろう。
「何でも何も父親の圧力に決まってんだろうが」
「父親?」
「おい、お前まさか知らないわけじゃないだろうな。羽生さんは羽生元警視総監のご子息だぞ」
「あ、そうなんですか」
そういえばそんな話を聞いたことがあったような気もする。
「おい、マジかよ。その程度の情報も知らないでよく刑事やってられるなお前」
「いや、羽生さんの情報と刑事の資質は関係ないでしょう」
「あるだろ。アホかお前は」
そんなことでアホ呼ばわりされては心外である。
「じゃあ、コピー終わったんで先行きます」
「あ、おいっ」
俺はまだ話し足りなそうな久高さんを残してその場を後にした。
俺は警察官という仕事には誇りを持っていたし、現状には何の不満もなかった。
真奈美ともう少し会いたいとか、話したいとか、そんな平和なことを考えるくらいの余裕はあった。
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