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「それ、肉じゃがっすか?」
「あ、はい」
直樹があまりに嬉々とした声を出すものだから、彼女が少し面食らったような表情をする。
しまった。
こうなると後に引けない。
「え、今どういう話?これもらえるって?」
「あ、はい、もしよければ」
「やったー!ありがとうございますっ」
直樹は賢く常識もある弟だが、良くも悪くも俺とは比較にならないくらい社交的で人懐っこい。
これがこいつの長所であるということは良く理解しているつもりだったが、それでも、今は少し勘弁して欲しかった。
「あ、じゃあお言葉にあまえて」
こうなってしまったら仕方がない。
俺は礼を言ってそのタッパーを受け取った。
「あ、これ、容器」
「玄関にでも、置いておいていただければ」
「あ、はい」
「では、失礼いたします」
「あ、ありがとうございます、ほんと」
「いえ」
ぎこちない会話を終え、彼女はその場を後にした。
俺はやたらテンションの上がった直樹とともに、彼女からもらった肉じゃがを食べることにする。
真奈美が作る料理よりもずっと美味しいと感じてしまうことに妙な罪悪感を覚えた。
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