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「あ、そうだ、兄貴、最近なんかの事件で女子高生助けた?」
「は?」
夜。
リビングの壁に寄りかかりながら文庫本を読んでいると、直樹が突然そんなことを口にした。
直樹のアバウトな問いに思わず声が漏れる。
女子高生?
そんな事件……。
「あ」
「心当たりあった?」
「捜一の仕事じゃないけど、この間の非番に通り魔にあって」
「非番にそんなことしてんの?兄貴ってコナンみたいだね」
「どういう意味だよ……。で、その子が何って?」
「その子、俺の同級生なんだけど」
「は?」
何だそれ。
「兄貴どっかで名乗った?なんか加護って名字でちょっと気になってたっぽいんだけど、俺が、兄貴が剣道強いみたいな話をしてるの聞いたらしくて、話しかけてきた」
「何て?」
「お姉ちゃんを殺したやつを探してくれって」
「は?」
非番に通り魔に会うよりもよほどコナンらしい内容に、眉をひそめずにはいられなかった。
「何?どういうこと?」
不穏な切り出しに対して、俺は文庫本を閉じ居住まいをただして直樹に向き直った。
「あ、殺したってのは俺じゃなくて彼女の言い方ね。彼女、早川夏帆っていうんだけど、八年前、彼女のお姉さんが妊娠して、出産時に亡くなったらしい」
「なるほど」
殺したというのは随分と物騒な言い回しだが、遺族にしてみればそう受け取ってしまうのも無理はない。
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