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「俺もよく知らないけど、手帳に、その彼とのデートらしき日が、わんちゃんハートって書かれてたんだって」
「なんだそれ」
あだ名?
犬に似てる?
でも、彼氏のこと犬って呼ぶ事あるかな……。
あー、訳わかんねえ。
「で、俺に人探ししろって?」
「頼むよ。早川にめっちゃ懇願されてるんだって俺」
「んなこと言ったって、そんな情報だけじゃ無理だろ」
「俺もそう言ったんだけどさ」と困ったような表情を見せた直樹は、「あ、兄貴明日休みだよね?明日俺の授業参観!」
「は?何?授業参観行って、お前んとこの教師に聞き込みしろっての?」
「まあ、うちの高校のOBである可能性は高い訳だし……」
「お前、俺がそんなことしてたら嫌じゃないのかよ」
「そこは兄貴がうまくやると信じてるから」
なんだそれ。
調子のいいやつだな。
「てか、教師に聞くとか、自分らでできるだろ」
「いや、それがさー、知っての通り公立高校だから先生の移動多くてさ、八年前にもいた先生ってほとんど残ってないんだよね。そういう先生にはすでに早川が直接聞いたんだけど、わかんないって……」
「じゃあ、俺が行ってもダメだろ」
「いや、わかんないよ」
何がわからないんだよ。
わかりきっているだろうが。
「頼むよ」
直樹にそう言われると断れないのが、俺の弱いところだ。
「わかったよ」
俺が折れるという、わかっていたはずの結末に対して、直樹が「さんきゅ。さすが兄貴」といつものように明るく笑った。
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