第六章

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さて、どうしたものか。 「その方の彼女のご家族から頼まれまして」 嘘ではないが、正確でもない。 「彼女」とその言葉の内容を噛み締めるように呟いた彼は、「その、彼女さんの連絡先を教えてもらうことはっ」と前かがみに訴えたところで、また言葉を切った。 「あれ、でも、なんで」 独り言を呟いて、当惑したような表情を見せる。 どうやら、『わんちゃん』の彼女がすでに死んでいることは知らないようだ。 それなら、この反応は当然だ。 『わんちゃん』の彼女がわかっているのならば、あだ名なんかで探さないで、その彼女に聞けばいいだけの話だから。 俺は思案の末、「実は」と切り出した。 不思議と、この人には話してもいいのではないかという気がした。 「その彼女、すでに亡くなってるんです」 「え」 「だから」 「あ、いたっ」 後方から生徒の声が聞こえて振り返る。 「センセー、もう保護者の人結構集まってるよー。早くー」 「ごめん、すぐ行くっ」 彼は即座にそう答えると、そのまま視線を俺に移す。 「あの、後ほど、連絡先渡します」 連絡先? 誰の? 『わんちゃん』? でも、さっき無理って……。 何がなんだかわからないまま、彼について懇談会へと足を運んだ。
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