第六章

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「良かったですね」 「はい」 若干慣れたとはいえ、やはり女性と長い時間会話をするのは居心地が悪い。 じゃあと言ってその場を立ち去ろうとしたが、その時、ぐうっと小さな低音が鳴った。 高橋さんは、はっとした表情を見せた後に顔を赤らめて視線を落とす。 俺はそれが彼女のお腹の音であることを認めた。 「飯でも、食います?」 口に出して、はっとした。 俺は何を言っているんだ。 「あ、いや」 やばい、取り消さないと。 そう思ったのに、俺が言葉を続けるよりも先に、「ぜひ」と彼女は微笑んだ。 「え」 まさか承諾されるとは思ってもみなかった。 どうしよう。 自分から切り出しておいて、ここで退くわけにもいかない。 「あ、えと、じゃあ、その辺入ります?」 俺は視界に入ったレストランを適当に指差した。 自分でも、何をしているんだと思うが、こうなってしまっては仕方がない。 高橋さんと連れ立って入ったのは、手頃な価格の、それにしてはやけに洒落たイタリアンレストランだった。 毎日のように通る道のはずなのに、こんな店があったこと自体知らなかった。 三階のガーデンテラスに案内される。 気温が高いせいか、頬に当たる風が気持ち良かった。 高橋さんはそのスレンダーな見た目にしては、随分と量を注文したので驚いた。 「すみません、朝から何も食べていないもので」と恥ずかしそうに笑う彼女は、やはりどこか幼さを感じる。 不思議な人だと思った。
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