第六章

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「あの、高橋さんは、どうして、ぜひと?」 「え」 「あ、いや、すみません」 自分から食事に誘ったものの発言とは思えない。 何を言っているんだ俺は。 高橋さんは「うーん」と小さく首を傾げたかと思うと、「加護さんと話していると、初恋を思い出すんです」と予想外の言葉を続けた。 「初恋?」 「すみません、いい歳してお恥ずかしい」 「あ、いえ」 高橋さんの口からそんな子供っぽい発言が出てくると思わなかった俺は、少々面食らってしまった。 「似てるんですか、俺?その、初恋の人に」 そういう話の流れだと思ったのだが、高橋さんは「いいえ」と言いながら小さく首を横に振った。 「え」 じゃあ、一体。 「なんでなんでしょうね。全然、似てないんですけど、どうしてか、彼のこと、思い出すんです」 高橋さんは、遠い目をして柵の向こうに見える月へと視線をやる。 その瞳に深い愛情が籠るのがわかった。 「まだ、好きなんですか?その人のこと?」 高橋さんは、はっとした表情を見せて俺の方を向いた。 それから、「私には、そんな資格はありません」と、どういう意味だかわからない発言をする。 しかし、どうしてだか、その発言の意図を追求しようとは思わなかった。 「その彼のこと、聞いてもいいですか。どんな人なのか」 似ていないのに、俺といると思い出すと言われたことが気にかかった。
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