第六章

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高橋さんは、小さく目を見開いた後、穏やかな表情で言葉を落とした。 「優しい人です。それに、とても、孤独な人。幸せになって欲しいと願っていたんですけど、結局私が壊してしまいました」 また、意味がわからない。 どういうことだろうか。 ただ、高橋さんがどれほど深く【彼】を愛しているか、それだけは表情からはっきりとわかった。 「好きだって、言わないんですか?」 彼女は、目を伏せて、小さく首を横に振った。 先ほど彼女が発した、「そんな資格はない」という言葉が聞こえたような気がした。 「加護さんは、彼女さんとは長いんですか?」 「え」 突然、自分の話題になって驚いた。 「あ、はい。もう、十年になります」 高橋さんは少し目を大きくして、「じゃあ、高校時代から?」と問うてくる。 「はい。部活の、後輩なんです」 「いいですね。加護さん、部活は何を?」 「剣道です」 高橋さんが「”らしい”ですね」と言って微笑むので、何だか居心地が悪い。 「お強いんでしょう?」 「何故です?」 「そう、見えるから」 俺は何も答えなかった。 戦績について、自慢するつもりはない。
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