第六章

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用を足してトイレのドアに手をかけた瞬間、誰かの悲鳴が聞こえた。 すぐさま外に出てあたりを見回す。 異常はすぐに見つかった。 男が高橋さんの胸ぐらを掴んで持ち上げ、テラスの柵に押し付けていた。 俺は弾かれたように走り出す。 「誰だよ、あいつ!なぁっ!」 軽率だった。 ストーカーが止まったなんて、勘違いだったのだ。 ただ、気付かれたことに気付いて、巧妙になっていただけだった。 どうして、そんなこともわからなかったのか。 男が両の手をさらに高く上げる。 高橋さんの上半身が柵の高さを超えていた。 「やめろっ」 全力で叫んだ。 あと少し。 たどり着いた時には、すでに彼女の体は柵の向こうへと投げ出されていた。 俺は訳も分からず、柵を乗り越えて空中へと飛び出した。 手を伸ばす。 届け、と全力で念じた。 そこで、記憶がぷつりと切れた。
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