第六章

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将晴。 将晴。 俺を呼ぶ声が聞こえた。 真奈美の声だ。 真奈美、ごめん、俺、この間、お前に嘘ついた。 早く、謝らないと。 真奈美に会って、謝って、そんで、一緒に飯を食おう。 真奈美。 真奈美。 「真奈美っ」 起き上がると、そこは病院のベッドの上だった。 「え」 なんで。 そう思った直後に、高橋さんとのレストランでの記憶が蘇る。 そうだ、高橋さん。 「お目覚めですか」 隣のベッドに横たわる病人の世話をしていた看護師がこちらを向いてそう尋ねた。 「真奈美って、須藤さんのことですよね」 彼女はそう言ってにっこりと微笑んだ。 先ほど、自分が大声で真奈美の名を呼んだことを思い出して、一気に恥ずかしくなった。 「あ、や」 「先生、呼んできますね。須藤さんにも、声をかけておきます」 そう言って彼女は去る。 段々と意識がはっきりして、冷静に物事が考えられるようになってきた。
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