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「好きだよ」
「将晴っ?」
「愛してる、真奈美」
最後に、そんなことを口にしたのは一体いつのことだっただろうか。
まったく思い出せなかった。
ただ、今、それを伝えなければならないような気がした。
真奈美が「痛いよ」と言うので、「ごめん」と返して彼女を解放する。
珍しく、真奈美の頬が赤く染まっていた。
「バカ」
「うん」
「すっごく、心配したんだから」
「うん」
「ほんとに、バカ」
真奈美が少し涙目になっていた。
この人を、一生懸けて幸せにしようと、心からそう思った。
「あー、もう、言いたいこといっぱいあったのに」
「うん」
「将晴の顔見たら、全部、忘れちゃったじゃん……」
真奈美がボロボロと泣き出す。
俺は、もう一度その手を引いて、彼女を抱き寄せた。
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