第六章

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「ごめんな。ありがとう」 「無事で、良かった」 「俺は丈夫なんだよ」 「バカ」 手を放すと、真奈美はそっと離れて、服の袖でその涙を拭った。 「あー、もう、泣いてたのバレバレ」 「いいよ。可愛いから大丈夫」 顔を赤くした真奈美が、「将晴頭打ったんじゃないの?検査してもらった方がいいよ」なんて言うから、自然と笑みが溢れた。 「あ、内海先生が将晴のこと見たいって言ってから、もしかしたら後で来るかもしれないけど……」 内海? 「麻子」 先日、直樹の担任教師からもらったメモに書かれていたその名前を口にしたのは、ほとんど無意識のことだった。 だから、それに対して真奈美が「え、将晴、内海先生のこと知ってるの!?」と返してきたのは、俺にとって予想外の事態で。 「え?」 「え、あれ?だって、今、麻子って」 「内海先生って、名前麻子なの?」 「え、そうだけど」 内海麻子、メモの人物だ。 何故――
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