第七章

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冬休みを終えてすぐに、違和感は訪れた。 あれだけ夏目にべったりだった渡辺が、明らさまに夏目のことを避けていた。 一緒にいないのはもちろんのこと、偶然近づいてしまうことすら回避しようとしている。 なんだ、これは。 俺が驚いたのは、その出来事もさることながら、クラスの他の連中がそれについて全く気にも留めていないということだった。 渡辺はもともと社交的で夏目以外のクラスメイトとも仲良くやっていたから、他の奴らからすれば大差ないのかもしれないが、クラス内で渡辺としか関わっていなかった夏目の浮きようは尋常じゃない。 行動のすべてが基本的に一人だ。 何故、誰もそれを気にしようとしないのか。 他人に対して、ここまで無関心でいられるということが怖かった。 夏目が渡辺の女を寝取ったという噂を聞いたときにはまさかと思ったが、二人の様子の変わりようを見ていると、それもありえない話ではないのかもしれないと思えてくるから不思議だ。 そんな状態のまま一ヶ月近くが過ぎたある日、俺は食堂で、夏目と渡辺とよく一緒にいた理一の男を見かけた。 渡辺の態度の変わりように対して釈然としないものを抱えていた俺は、名前もわからないそいつの肩に手をかけて呼び止めた。 「何?」 長身に、浅黒い肌。 精悍な顔付きだ。 ボート部だと言われたら、多分信じる。
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