第七章

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「あの、俺、夏目と渡辺の同クラで、三池っていうんだけど、えっと」 「だから、何?」 おそらく怒っているわけではないのだろうが、無愛想な奴だと思った。 「あの、ちょっと、聞きたいことあって、一緒に飯食わない?」 詰まらなそうな表情を見せるから、断られるんじゃないかと思ったが、そいつは「別にいいけど」と承諾を意味する言葉を返した。 「ありがとう」 俺は一緒にいた連中にことわって、そいつと二人席についた。 男は、柳瀬拓実と言った。 どこかで聞いたことがあると思ったが、高校時代に少し有名だった『物理の柳瀬君』であることを思い出した。 確か、東大模試を含めても満点を逃したことがなかったはずだ。 物理オリンピックの金メダリストだったっけか。 夏目、渡辺、柳瀬。 ふと、なぜこの三人が出会ったのかを不思議に思った。 夏目と渡辺はクラスが同じだからだろうが、そこにこの柳瀬が加わったのは何故だ。 三人が行動を共にする様は、少なからず人目を引いていた。 理由は簡単だ。 三人とも、容姿がいいから。 本人たちのことを知ってみれば、その学力の高さが東大の中でも際立っていることがわかる。 科類も違うのに、一体どこで。 それについても後で聞いてみようと思った。
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