第七章

6/60

75人が本棚に入れています
本棚に追加
/507ページ
「写真とかないの?」 その質問がただの好奇心であったことは認めよう。 渡辺もさることながら、夏目に選ばれる女性というのがどういう人なのか、とても興味があった。 「写真?どうだっけ……」 相変わらずのゆっくりとした話し方で、のっそりとリュックサックの中に手を入れる。 取り出されたのは、まだ所有者も少ないスマートフォンで、その動きの鈍さのせいかどこかちぐはぐな印象を受ける。 「んー、翔太からメール来てた気がするんだけど」と言いながら、たいして急ぐでもなくそれを操作する柳瀬は、「あ、あった」とその画面をこちらに向けるまでに三分以上を有した。 スキー場で撮られたであろうその写真には、夏目、渡辺、柳瀬の三人と、同い年くらいの女性が二人写っていた。 なるほど、二人とも美人だ。 そして知性的な印象を受ける。 一般的にレベルが高いとされるのは言うまでもない。 男側のメンバーも夏目、渡辺、柳瀬だから、まるでドラマの中の一枚のようによくできたワンショットが出来上がっている。 最初に抱いた違和感が、また頭をもたげた。 「右?」と尋ねると、「ううん、左」と返ってくる。 二択で外したか。 左の女性は少しクールでキツめな印象を受けるのに対し、右の女性はどこか暗く、それでいて不思議な華を感じた。 確かに、左の女性の方がモテるというイメージは与えるが、それでも、惹かれたのは右だった。 渦中の女性は左の方だと答えを教えられても、何故だか、もう一人が気になってしまう。
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加