第七章

7/60

75人が本棚に入れています
本棚に追加
/507ページ
「渡辺の彼女だったの?」 「いや、翔太は狙ってただけ」 「ああ、そうなのか」 そうなるとまた話は違ってくる。 渡辺とこの子がどれほど親しかったのかにもよるが、別に先に夏目が告白したからって責められるようなことではない。 しかし、狙っていた女が友人と付き合いだしからといって、明らさまにに遠ざけたりするものだろうか。 「それであの態度?」 何か理由がないと、それではあまりに渡辺が子どもっぽいような気がする。 それに、渡辺の夏目に対する執着は、ある種異常と呼んでもいいそれだった。 あれは単に友人というだけでは収まらない。 渡辺は、夏目に憧れていたのだ。 そこに、自分の可能性を見ていたと言ってもいい。 そう思っていたのだが。 「んー、でも、最初に翔太を遠ざけたのは宗佑の方だし」 「そうなのか?」 「うん」とひとつ頷いてから、柳瀬は件のスキー旅行の話を始めた。 渡辺が狙っていた女性と旅行先で遭遇したとか、初日にその女が怪我をしたとか、翌日になってみたら夏目と付き合いだしていたとか、作り話ではないかと問いただしたくなるような話が続き、正直俺は辟易していた。 一体どこからどこまでが偶然なのか。 すべて夏目が謀ったのではないかとすら思えてくる。
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加