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「渡辺の彼女だったの?」
「いや、翔太は狙ってただけ」
「ああ、そうなのか」
そうなるとまた話は違ってくる。
渡辺とこの子がどれほど親しかったのかにもよるが、別に先に夏目が告白したからって責められるようなことではない。
しかし、狙っていた女が友人と付き合いだしからといって、明らさまにに遠ざけたりするものだろうか。
「それであの態度?」
何か理由がないと、それではあまりに渡辺が子どもっぽいような気がする。
それに、渡辺の夏目に対する執着は、ある種異常と呼んでもいいそれだった。
あれは単に友人というだけでは収まらない。
渡辺は、夏目に憧れていたのだ。
そこに、自分の可能性を見ていたと言ってもいい。
そう思っていたのだが。
「んー、でも、最初に翔太を遠ざけたのは宗佑の方だし」
「そうなのか?」
「うん」とひとつ頷いてから、柳瀬は件のスキー旅行の話を始めた。
渡辺が狙っていた女性と旅行先で遭遇したとか、初日にその女が怪我をしたとか、翌日になってみたら夏目と付き合いだしていたとか、作り話ではないかと問いただしたくなるような話が続き、正直俺は辟易していた。
一体どこからどこまでが偶然なのか。
すべて夏目が謀ったのではないかとすら思えてくる。
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