第七章

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「それで?」と俺は話を先へと促した。 「翔太は、そりゃ驚いてはいたみたいだったけど、でも、おめでとうって言ったんだ、ちゃんと。それで、旅行自体はそのまま続いたんだけど、こっちに帰ってきて、解散するとき、宗佑が翔太に喧嘩売ったんだよ」 「喧嘩?」 ようやく最初の話に戻ってきた。 「その女が翔太より自分を選んだとか、自分は翔太の八方美人みたいなところが嫌いだとか、まあ、そんな感じ?」 「そんな感じって……」 思った以上に過激な内容に、俺は言葉を失った。 あの夏目がそんなことを口にするのか。 「それ、本気で言ってたのか?」 それで渡辺の怒りを買って今に至るということだろうか。 「違うよ」 「え?」 さも当然というような柳瀬の返答に、俺は再び言葉を失う。 「本気じゃないよ。それは、翔太もわかってる」 「なら」 「でも、少なくとも翔太と離れたかったのは本当だし、それがわかってるから、翔太だって近付かないんだ」 なるほど。 そういうことか。 それで、あんな風に。
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