第七章

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「宗佑にとって、俺たちの存在は実験だったんだ」 「実験?」 「友達という存在の価値や有用性についての実験だ。サンプルに完璧さを求めたことは、むしろ宗佑らしいと思うけど」 現実離れした話に思考が追いつかない。 実験? 渡辺と柳瀬がサンプル? 自分の中にある夏目宗佑という男に対する印象がどんどん揺らいでいく。 「そして、実験は失敗した」 柳瀬は静かに言葉を吐いた。 柳瀬の表情が変わらないことを、初めて怖いと思った。 「もし、それが事実だったとして」 柳瀬の話をすべて信じたわけではない。 しかし、半信半疑ながらも、俺はとにかく話を肯定して先に進むことにした。 「お前は、いつそれに気付いたんだよ?」 柳瀬はまるですべてを見透かしたように話すが、それが事実なら、そもそもどうして夏目と友人関係を築いていたのか。 こいつらが一緒に過ごしていた時間は、一体何だったんだ。 「知ってたよ。最初から」 渡辺よりも、夏目よりも、こいつが怖い。 お前は、誰だ?
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