第七章

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「あ」 古い記憶が繋がったような気がした俺は、思わず声を漏らした。 柳瀬がわずかに首を傾げる。 高校時代、近くの高校で一つの事件が起きた。 同い年の男子生徒の親が強盗殺人を犯し、さらに男子生徒がその親を殺したというショッキングな内容だ。 歩いて十分もかからない学校で、中学までの友人も多く通っていたものだから、話はすぐに伝わってきた。 結局、男子生徒は正当防衛が認められて実刑を受けることはなかったが、その生徒について徹と話したことがあったのを思い出した。 「すげーイケメンで、超賢い」 「は?」 「徹が、そう言ったんだ」 どうして、今の今まで忘れていたのだろうか。 「何の話?」 「高校時代、夏目の学校であった事件の当事者を表した言葉だ。親を殺したって……」 さすがの柳瀬も、少しだけ目を大きくした。 「もしかして」 あれは、夏目のことだったんじゃないのか。 証拠なんてないのに、不思議と確信に近いものを感じていた。 「なるほどね」 柳瀬は、まるで何かに納得するかのように、その言葉を口にした。 なぜ、どうして、そんな反応になるんだ。
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